「古事記」研究者と歩く慶州
知人が古事記の研究をしていることから、古事記に興味を持ちました。その中に度々出てくる新羅について、その歴史的遺産から当時の様子をうかがい知ることができればと思い慶州の細道を覗いてきました。
新羅(しらぎ/しんら紀元356年- 935年)は、朝鮮半島南東部にあった国家です。後に高麗に降伏して滅亡しますが、それまでは朝鮮半島をほぼ統一していました。慶州市(金城)はその新羅の首都でした。
慶州市は、人口30万人ほどの小さな都市で、「屋根のない博物館」と呼ばれるほど歴史遺産が点在しています。なかでも石窟庵と仏国寺はユネスコの世界文化遺産です。
慶州は、釜山から車で1時間30分ほどの距離にあり、国内外から多くの観光客が訪れます。
釜山と博多は、高速ジェットフェリーで3時間で結ばれています。古代には対馬を日本の窓口として朝鮮半島との貿易が盛んに行われていました。
世界遺産の「仏国寺」불국사 Bulguksa
仏国寺は、韓国仏教界「曹渓宗」(禅宗)の寺院です。
この寺院は、景徳王時代の宰相であった金大城によりに新羅時代(751年)に創建されました。当時は現在の10倍の規模を誇る大伽藍を擁していたそうです。
三国統一以降、国が安定して文化力が高かった景徳王時代は新羅文化の黄金期で、当時の人々は新羅が仏国土だという願を持っていたと言われ、仏国寺が創建されました。
その後、李氏朝鮮の仏教弾圧や豊臣秀吉の朝鮮出兵(文禄・慶長の役)などにより、長らく荒れ果てていましたが、戦後、修復工事が行われて現在の美しい寺院になりました。
創建当時のものは石段など石造物だけですが、新羅時代の人々の技術力の高さやすぐれた芸術的感性をうかがい知ることができます。
韓国のお寺の7割は禅宗で、「卍」の文字がよく見られます。
日本統治時代に撮影された仏国寺。現在の仏国寺は1970年代に再建されました。
上:ここからの姿が一番素晴らしいお寺です。
下:正面
金の豚(イノシシ)
この豚に触ると金運がやってくるらしい。みんな触るものだから金ぴかに光っています。
600年に一度のめずらしい年(十二支)に、この猪が発見されたそうです。
もとは毘盧遮那仏を本尊とする華厳宗の寺院でしたが、1970年代に再建された現在の仏国寺は、禅宗系の寺院です。創建時に本尊だった毘盧遮那仏は、現在寺院奥手の毘盧殿に安置され、本殿の大雄殿には釈迦三尊仏(釈迦牟尼、文殊菩薩像、普賢菩薩)が安置されています。
下:釈迦塔(国宝)
新羅時代の三重石塔です。高さ8.2m、仏国寺創建当時からのものと言われています。1966年に修復の際、塔中央部から金銅・銀製の舎利函3点とともに木版印刷物『無垢浄光陀羅尼経』(むくじょうこうだらにきょう)が発見されました。これは8世紀前半のものと推定され、現存する世界最古の印刷物とされています。その印刷物は、現在は別のところで保管されており、この寺にはありません。本物を見てみたいものです。
※陀羅尼は梵語(サンスクリット語)で呪文のことです。平安祈願などのために塔を作った際にお経を入れたのでしょう。
寺院の石積み(創建当時のもの)から、新羅時代の土木建築の技術力の高さは相当なものだったと説明(写真下)があります。
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