アブシンベル神殿の奇跡
ナイル川にアスワンハイダムが作られることになり、湖に沈むことになったアブシンベル神殿ですが、ユネスコによって資金が集められ、1964年から1968年にかけて、約60m上方の丘に移築されました。移築には基礎となるコンクリートと鉄筋によるドーム型の岩山が作られ、その表面にいくつもの分割された遺跡が移築されました。
移築する際、人力で切り出されています。気の遠くなるような作業です。機械を使って切り出すとその振動などで壊れてしまう恐れがったそうです。アブ・シンベル神殿は世界文化遺産として登録されています。
今、私たちが見るアブシンベル神殿は、大きな人工の岩山が2つある作りで、大神殿と小神殿からなっています。そこに人力で切り出した顔や手足などが貼り付けられている構造になっています。見ると継ぎ目がみられます。もともとは岩山をくりぬいて作った構造なので継ぎ目などはありませんでした。この神殿を作ったのはラムセス2世。ラムセス2世の大神殿とその妻ネフェルタリの小神殿が並んでいます。
たびたび出てくるラムセス2世ですが、この王様は、「王のなかの王」として尊敬され、大王となった人です。ラムセス2世は、紀元前1314頃 から 紀元前1224年まで生きた王様で、当時平均寿命が40歳くらいと言われていた時代に90歳まで生きました。そして、妻は40人、子供は180人いた王様です。身長は190センチもあったともいわれた大男で、いくつもの戦いに勝って名を残し、大王となりました。やがて神格化されアブシンベル神殿に祭られるようになりました。
また、ヒッタイト(現トルコ)と戦い、ラムセス2世の活躍により一旦は勝利を収めたものの戦争が長引き、エジプトとヒッタイトは平和条約を結んで休戦しました。世界最初の平和条約と呼ばれています。
ラムセス2世のミイラはエジプト考古学博物館にあります。私はそれを見るために考古学博物館を訪れ、ミイラになり小さくなった大王の姿に手をあわせました。
人の力だけで切れ出されている貴重な記録写真です。
アブシンベル神殿を私が訪れたのは、2月23日でした。その前日は、朝日に照らされたラムセス2世の姿をみられる年2回(ラムセス2世の生まれた2月22日と、王に即位した10月22日)のチャンス。そのため4000人の観光客が集まったそうです。それだけ集まると狭い神殿内には入れません。
しかし、私が訪れた日も登る朝日に照らされたラムセス2世を拝むことができました。なんという幸運。
早朝、ホテルを出発し、暗いうちに神殿に到着。この日は、ラムセス2世が祭ってある神殿の奥まで入ることができたので、そこで朝日が昇るのを待ちました。しばらくすると東の空に太陽が昇りはじめ、その光が神殿の奥まで届き、ラムセス2世の姿を明るく照らします。
とても神秘的な現象でした。あ~っ!ありがたや。ありがたや。
神殿内は撮影禁止で神殿を守るエジプト人が数人いるため、この感激の瞬間はまなこに焼き付けるしかありません。
こんな風に朝日が神殿の奥まで差し込みます。そこにはラムセス2世が鎮座されています。
神殿内などを撮影した貴重な写真(下)
朝日に照らされたラムセス2世(右から2人目)
下はその神殿内の様子
神殿入口は夜は扉が閉まります。その神殿の扉を開ける鍵がこれ!
左:大神殿 右:小神殿
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